行動情報をビジネスに変える『IoB(Internet of Behaviors)』をわかりやすく解説!

– はじめに

現在、私たちの生活は、新型コロナウィルスの蔓延を受け、新しい生活様式に実践しながら生活しているものと思います。
このような背景から、2020年から「人の行動」に着目したテクノロジーとして「IoB」が急速に注目を集めております。では「IoB」とは何か、その概要や実現に向けた取り組みについて解説していきます。

– IoBとは

■IoB(Internet of Bodies)とIoB(Internet of Behaviors)の違い

まず、始めにIoBとは大きく2通りの概念が存在します。
1つ目はIoB(Internet of Bodies)です。
こちらは、「IoT機器によって人間とインターネットをつなげるテクノロジー」を指します。
IoB(Bodies)は、身体情報を取得することができるウェアラブルデバイス※1のように、IoT機器によって身体がインターネットにつながった状態で、人の動作や行動をデジタルで追跡することを概念としています。
※1 ハンズフリーで操作可能な人が身につける機器のこと

このIoB(Internet of Bodies)は大きく3つのフェーズが存在します。
第1フェーズは、身体情報の「定量化」となります。現時点では体内にデバイスを埋め込む第2フェーズ「体内化」までが実現可能なフェーズとなります。そして、現在研究段階ではありますが、脳に直接デバイスをつなげる第3フェーズ「ウェットウェア」も近い未来、ヘルスケア領域において更なる活用が期待されています。
しかし、デバイスへのサイバーテロによって蓄積された情報が漏洩してしまう可能性があることや、デバイスの不備によって命がおびやかされることも考えられており、これからの課題解消にむけた取り組みに注目が集まる分野となります。
本コラムでは、もう1つのIoB(Internet of Behaviors)について概要から解説していきます。

もう1つはIoB(Internet of Behaviors)です。
こちらは、「IoB(Bodies)に個人の行動に焦点を当てた要素が加わったIoTの概念」を指します。
下記の図のようにIoB(Bodies)で扱っていた情報に加えて、個人の位置情報や運動履歴、閲覧したWebページから収集した情報などを用いて、個人がより快適な生活を実現できることを焦点に加えた考え方がIoB(Behaviors)となります。

図1 IoBの拡大

■IoB(Internet of Behaviors)の定義

前項では、IoB(Internet of Bodies)とIoB(Internet of Behaviors)の違いについて触れましたが、その内容を踏まえて、IoB(Internet of Behaviors)の定義について解説します。
下記の図はIoB(Behaviors)を構成する3つの要素をまとめたものとなります。IoBは、主に「データ」「データ分析」「人の行動」を掛け合わせることで実現することが可能となります。
まず「データ」ですが、こちらは、蓄積された生データのことを指します。商品ページの閲覧履歴や購買情報など幅広い情報源が「データ」の対象となります。また、IoT機器を使用して取得した情報についてはDB(データベース)に格納することができるため「データ分析」に必要なデータを確保できます。
続いて、「データ分析」ですが、こちらは蓄積された「データ」を加工する手段を指します。「データ分析」を行う主な手法としては、BIツール(ビジネスインテリジェンス)が挙げられ、ダッシュボード上にグラフ情報を出力することで分析観点に沿って可視化することが可能となります。
最後に「人の行動」ですが、こちらは個人の行動のことを指します。この個人の行動をよりフォーカスしていくと「データ分析」の際に必要となる、人の行動を最適化させる分析観点を発見することができるようになります。一つの例として、インターネット通販を利用される方は体験されたことがあるかと思いますが、商品を見ていた際に、「この商品を検索された方はこの商品も閲覧されています。」といったおススメ通知機能があります。この機能はまさに「人の行動」の観点を取り入れたサービス展開をしています。
これらを踏まえ、IoB(Behaviors)は人の行動の最適化につなげる観点に沿って蓄積したデータを分析し、人に対して影響を与える概念であると定義付けることができます。

図2 IoBの構成

– IoBの実現に向けて

これまではIoBについて触れましたが、IoBを実現するためにどのような取り組みが必要なのかを「データ」、「データ分析」、「人の行動」それぞれの観点に沿って解説します。
まず、「データ」ですが、年々人の行動について取得および解析が可能な機器が増加しており、IoBへの取り組みは容易になってきております。先に述べましたウェアラブルデバイスをはじめ、エッジAI※2を搭載したカメラを安価に購入できるなど人の行動について取得可能なIoT機器が増加しております。今後増加するであろうIoT機器の情報を逐一確認すること、または自社サービスと連携可能なIoT機器を調査することから始めるとよいです。
※2 端末に搭載されるAI(人工的に作られた人間のような知能、ないしそれを作る技術)

続いて「データ分析」ですが、大きく2つの実現方法が検討できます。1つは、最適な機械学習プラットフォームを検討することです。現在、機械学習プラットフォームとしては、AWSのAmazonSageMaker※3やAzureのAzure Machine Learning※4などの機能が挙げられます。上記であれば環境構築からエンドポイントの提供までをクラウドで実現することはでき容易にIoBのサービスを検討することが可能です。もう一つは、自社サービスの仕組みを改修してIoBの観点に沿った新規サービスを実現することです。1つの例としては、体温検知が可能な顔認証システムと社員DBを連携させることが挙げられます。社員Aが高熱を出して出勤してきた場合に、社員Aの上長にアラートをあげ、未然にその情報を共有することができれば不要な接触を回避することができます。このようにそれぞれ独立した要素を掛け合わせて新たなサービス運用を検討することも、IoBサービスの実現を加速させる方法となります。
※3、※4 本文中における会社名、商品名は、各社の商標または、登録商標です。

最後に「人の行動」ですが、常に新しい情報を受信できるようにトレンドに対してアンテナを張っておくことが望ましいです。大手企業や先見性に長けた企業は新型コロナウィルスが長引くことを見越して、混雑状況の可視化など早くから今後商材価値の上がるサービスを検討し、実現しています。今の時代に沿ったサービスに変革できるかなど柔軟な思考をもつことが大事になります。

– 最後に

IoBは、人の行動の最適化に焦点をあてたIoTの価値を向上させる概念です。IoTによって便利になった社会を、人の行動にフォーカスすることでさらによりよいものとするために必要なテクノロジーとなります。私たちの生活はすでにIoBへの準備が着々と進んでいます。IoBの活用方法を皆さんもご検討してみてはいかがでしょうか。

 

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