NTCコラム第一回 エッジコンピューティングとは?事例を交えてわかりやすく解説!

はじめに

近年注目されている”エッジコンピューティング”という言葉を聞いたことはありますか?
なぜIoTが普及している今、注目されているのか、これからどのように使われていくのか、
どのようなメリットがあるのか事例を交えてわかりやすく解説します。

1 エッジコンピューティングとは?

2 なぜエッジコンピューティングが必要なのか

3 エッジコンピューティングの活用事例

4 エッジコンピューティングとNTCソリューション

 

エッジコンピューティングとは?

「エッジ」とはモバイル機器などのデバイスや無線基地局、工場内の製造設備など
ネットワークの末端機器にあたる設備の事を指します。
つまりエッジコンピューティングとはサーバを末端機器に分散配置させ、
ユーザーの近くで処理を行うことで上位システムへの負荷や通信遅延を解消し
低遅延での処理を行うコンピューティングモデルです。

(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)

 

IoTの普及に伴いデジタルデータが増加している今、インターネットを通しユーザーから離れた場所で処理を行うクラウドコンピューティングでは大きなデータを扱うには処理に時間がかかるという課題があります。
その点においてエッジコンピューティングではユーザーの近くで情報を処理し必要なデータのみをインターネットへ送信することが可能なため低遅延で処理を行うことが可能です。

なぜエッジコンピューティングが必要なのか

先に説明した通り、IoTの普及に伴いデジタルデータの量が膨大に増加しています。
実際に総務省のデータではブロードバンドサービス契約者の総ダウンロードトラヒックは2014年以降急激に増加、直近では前年同月比52%増となっており、IoTが常識として浸透されていくであろうこれからも増加傾向になると考えられます。

(出典)総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算」(左:ブロードバンド、右:移動体通信)https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc121210.html

それに伴い、低遅延での通信が求められるリアルタイムアプリケーションの利用が拡大し、実用技術も進化したことにより注目を集めています。
クラウドコンピューティングと比較した際にはメリット・デメリットともに存在し、それぞれ以下のようなことが挙げられます。

※GDPR:(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)EUにおける個人データ保護に関する法律

 

求められる判断のリアルタイム性や、セキュリティ要件、利用可能なネットワーク帯域幅などによって、クラウド側とエッジ側での適切な機能を配置していくことが、エッジコンピューティングでは重要になっています。

そして、今後はクラウド側で分析モデルを作成する学習機能を集中管理し、エッジ側に分析モデルを分配配置してエッジ側で分析するような構成が主流になっていくと考えられています。

 

エッジコンピューティングの活用事例

エッジコンピューティングは様々な分野での活用が期待されています。

【ウォークスルー顔認証を活用した入退管理ソリューション】

顔認証には一般的に、「顔検出」「特徴量抽出」「照合」の処理が必要になります。この処理を実行するためには、撮影画像を処理する必要がありますが、クラウド上ですべて処理しようとすると撮影画像をそのままクラウドに転送する必要があり、タイムラグが発生してしまいます。
しかし、エッジ側で顔検出・特徴量の抽出までを行うことで、クラウドへ送るデータ量を削減し、データ転送によるタイムラグを減らすことができます。それによりカメラの前で立ち止まることなく、歩きながらの顔認証を可能にしています。

【自動車運転】

自動運転は、2020年、運転者の運転支援(レベル2)からシステムによる自動運転(レベル3)への転換期と言われています。

レベル1:車線逸脱補正・車間距離維持・衝突前自動減速・駐車サポートなど
レベル2:先行車追従(車線逸脱補正×車間距離維持)など
レベル3:特定の場所ですべての操作が自動化、緊急時はドライバーが操作。
レベル4:特定の場所ですべての操作が完全に自動化
レベル5:あらゆる状況での自動化

引用:自働運転レベル定義:官民 ITS 構想・ロードマップ 2019 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20190607/siryou9.pdf

完全自動運転(レベル5)に向けて、車と車がネットワークでつながり、車間距離や速度等、運転に必要な情報を共有する必要があります。しかし、やり取りが必要なデータ量は非常に多く、ネットワークがデータ量の重さにより遅延してしまうことは、交通事故につながってしまう可能性があります。エッジコンピューティングは先に説明した通り、端末側で処理をすることでデータ量の多さによるネットワークの遅延を軽減するために考えられました。実用的な車速を達成する遅延時間の目安は全体で100msとされており、高速低遅延の5Gとエッジコンピューティングを組み合わせることが必要と言われています。

エッジコンピューティングとNTCソリューション

スマート工場の実現化のためのソリューションにもエッジコンピューティングが活用されています。

スマート工場とはあらゆる機器や設備のデータをネットワークに接続し、データを分析・活用することで新たな付加価値を生み出す工場を指します。
工場では、日夜様々な種類の機器や設備が稼働しています。スマート工場実現のためのデータ分析を行おうとネットワークにつなぎ、データ分析を行おうと考えても、やり取りするデータ量が膨大となってしまいます。
そこで、現在はエッジコンピューティングの概念を用いて、分析に必要なデータだけをサーバに送りデータを分析することで、スマート工場の実現を目指しています。

例えば、NTCが提供するLOSSØでは、電流波形の時系列データから、製造時の品質検査を分析し、自動化した事例があります。

※PLC(Programmable Logic Controller)・・・機械を自動的に制御する装置のこと
※Modbus・・・産業用電子機器を接続するための通信プロトコル
※MQTT(Message Queueing Telemetry Transport)・・・IoTに適した通信プロトコル

 

設備から電波波形データを収集し、IoTゲートウェイ※でデータ加工し、品質検査に必要なデータのみをサーバに送ることで通信データ量を削減しています。

LOSSØでは、スマート工場を実現するために以下を提供しています。

  • センサー販売
  • IoTゲートウェイ販売
  • LOSSØライセンス販売
  • カスタマイズ開発

※IoTゲートウェイとは:センサーなどの端末(モノ)と通信する機能とクラウドサーバー(インターネット)と通信する機能の両方を持ち、両者を中継するもの。

LOSSØは、「膨大な過去のデータ」から品質不良や設備停⽌、製造⼯程の無駄を生み出す作業や設備状態のパターンを⾒出し、その検知や予測をすることで「作業工程の自動判別による予実管理」や「最適な生産計画の自動算出」、「メンテナンス時期の自動予測による設備管理」を実現いたします。
【QCDの改善】や【働き⽅改⾰】を推進する製造業の皆様の様々な課題を解決致します。
※資料ダウンロードはこちらから行えます。
https://www.ntc.co.jp/service/solution/loss0-wp-form
LOSSØのエッジコンピューティングは、まだ非常に軽い処理のみとなっています。将来的には、エッジ側に処理を任せるアーキテクチャも検討し、よりリアルタイム性・保守運用性を向上したスマート工場の設計を目指します。

最後に

今回は「エッジコンピューティング」とは何なのか、メリットやデメリットはどのような事が挙げられるのか、事例を交えて解説しました。
IoTが普及し、様々な分野で活用されていく中でIoTを支えていく「エッジコンピューティング」もまたこれから更に注目され重要なものとなってくるでしょう。